「…古見井さ、俺のこと係長って言いづらいだろ。」 また前を向き、歩き始めたかと思うとそう、日野さんは口にした。 あ、やっぱり気づかれてた。 同僚として働いていたときは【日野さん】と呼んでいたから。 直さなきゃと思ってはいるものの、まだスムーズに【日野係長】とは出てこない。 「すいません、早く慣れますので。」 …そう、日野さんは【日野係長】で、上司で。 この優しさも、部下を思う優しさ。 そんなこと、わかっているのに。 高鳴る心臓はおさまらない。