誕生日は残業



「古見井って、思ったより鈍いんだな。
これだけ言ったら、察してくれるもんだと思ってた。」


高鳴る心臓を抑えるのに必死なあたしは、日野さんの言葉を考える余裕もなくて。

ただ「え?」と声を漏らす。


「…まあ、いいや。
直接言えばいいだけの話か。」


そんなあたしに、日野さんは困ったように微笑むとパッと頬から手を下げて。

スーツケースと一緒に持っていた紙袋から、可愛くラッピングがされている小さな花束を取り出した。