「…いつもとは違うよ。」
「……何したんだよ」
低くなる声。
いつも聞くような優しく甘い声じゃない。
ねぇなんで怒るの?
肩書きの彼女だけなあたしに。
オモチャを取られたくない気持ち?
……そしたら違うよ。
あたしはオモチャじゃないもん。
人だもん、心があるもん。
いつもハイハイ言うこと聞いてるなんて思わないでよ。
本当はいつも、
他の子の所になんて行ってほしくない。
他の子に優しくしないでほしい。
全部、あたしだけがいいって思ってるんだから。
「あたしが、抱き締めたの。」
「……は?」
「秦を、抱き締めたの。」
「ひまりが?」
「そうだよ。」
全てを終わらせたいと思うのに、
だけど全てを終わらせるのは嫌で。
皐にいてほしくて。
まだ彼女で居たくて。
「……呆れた。」
「え…?」
「誰にでもくっつく女なんだな、お前は」
「ちがっ…!」
「俺より秦がいいわけだろ?」
「そういうんじゃ…」
「なんなんだよっ!!」
「さ…つき…」
「……帰る」
「え……?」
待って、皐。
あたしこれから1人ぽっちなの。
行かないで。
1人は嫌なの。
何してもいい…怒ってもいい。
怒鳴ってもいい。
無視してもいい。
――だからお願い…っ…
「っひまり?」
「1人…にっ…しないで…!」
「……っ」
去っていこうとする愛しい背中に抱きつく。
腕の中は冷たいのに、背中は温かいんだね。
――それってなんだか悲しいよ。
あたしが抱きつかなきゃこの温もりは知らないんだもん。
みんなは知っているのかな?
皐のこの温もりを。
「……皐っ…」
「……わーったから。行かねぇから、離せ」
「ごめ…なさい…」
「…つか、コーヒー」
ずっとくっつかせてくれないのが皐。
――そんなにあたしが嫌い?

