「…なぁひまり」

「まだその話はしたくない」

「……わかった」






その声、その瞳。

――皐、のことでしょう?

まだその話はしたくない。

まだ落ち着かないから。

ザワザワしてるから。






「…あったかい」

「ホットココアだしな」

「…あったまる。」

「………」






冷えてしまった心まで溶かすように、温かい。


――ココアが、こんなに温かいなんてね。

あたしの心が、どうかしてるのかな。






「甘くておいしい…」

「だろ?俺が淹れるココアはうまいんだ」

「…バカ」






笑ってしまう。

あんなに泣いていたのに、

今はもう笑ってる。

やっぱり秦はすごいなぁ。





「…ねぇ、秦」

「んー?」

「秦は大切な人いる?」

「…たくさん、いる」

「好きな人は?」

「…いるよ」







そう微笑む秦は、

とても優しくでも、切なく。

――あぁ、本当に好きなんだ。

って感じた。