「皐が好きなんだろ?」
『…うんっ…』
「なら…」
『も…やなのっ…!辛いのぉ!』
「……ひまり。待っててな、行くから」
『秦…っ…来て…』
「待ってろ」
そう力強く、でも優しく言った秦。
まるで“泣き止め”とうながすようだ。
「…悪い、皐。行く」
「待て…」
「お前じゃもう、無理だ」
「……っ!」
「頭冷やせ」
それだけ残して秦は走った。
――ひまりのもとへ。
「……ははっ…」
負けてたんだよ、初めから。
秦にだって、翠にだって勝てやしなかったんだ。
俺はひまりを笑わすことなんて出来ないし、
俺はひまりを幸せになんて出来ないんだから。
ただ……ひまりを苦しめてばかりで。
ただ……ひまりを泣かせてばかりなんだから。
“泣かせたくない”って思ってるくせに、
いつもひまりを泣かせてるのは、
俺だった――………。