「そこは3回」
「……うん」
「てか、記念日に別れなさいよ」
「……期待、してるのかも…」
「ひまりって…本当にバカだよね」
「ひどいー!」
「……どれだけ思われてるのよ、あんたは」
「えっ?」
「……ううん。」
聞こえなかったけど、
なんだか宇美の顔は切なく歪んでいて。
――どうして…?
って聞こうとしたけれど、
“聞いちゃダメ”ってあたしの心が言った。
「秦と付き合うの?」
「……ううん。」
「翠?」
「あたしは誰とも付き合わないよ」
「……そんなの無理よ」
「……?」
「人は気づかぬ内に恋に落ちてるんだもん」
「…恋に臆病になった人はそんなの関係ないよ」
「好きなのに別れる人がそんな事言わないの」
――好きだよ。
堪らなく、皐が大好きだよ。
だけどもう……嫌なんだ。
「逃げるんでしょ?ひまりは」
「そうだよ。…苦しみたくないの。」
「浮気してる理由があるかもしれないのに?」
「…あるだろうね」
「だったら…」
「浮気する理由なんて、飽きたか好きじゃないかでしょう?」
「……ひまり…」
「いいの。皐には自由に恋してほしい。あたしになんて縛られないで」
わかっていたのに別れてあげれなかった。
その事実を認めたくなかった。
――だけどもう逃げられない。
“好きだよ。”
と言ってももう皐は、
“俺も好きだ。”
とは言ってくれないのだから。