一途な彼女×浮気な彼氏


「離してっ…!!」

「…っ!?」







一瞬力が緩んだ隙にあたしは屋上へ走った。


……皐に触れられる事を拒んだ。

ごめんなさい…皐。







――ガチャン…




「……ははっ…」

「ひーまりちゃん」

「翠…く…」

「ね、抱き締めてい?」

「えっ…?」

「今さ、ひまりちゃん苦しそうだから」

「そんな…のっ…!?」







グイッと体を引き寄せられる。

……翠くん。

あたしの安心できる温もりじゃない。

あたしの安心できる匂いでもない。

だけど今は……誰かに抱き締めてもらいたかった。

怖いから。

――………自分自身が壊れてしまいそうで。








「ひまりちゃんさ、我慢するのも程ほどにってね」

「…翠くん…」

「あげる」

「これ…っ!」

「ひまりちゃん、マシュマロ好きでしょ?」

「でもあたしが買いに行ったときは…」

「うん。ラスト1個なの買ってきたんだし」

「…マシュマロ…」

「はい、あーん?」

「……あ、あーん///」

「カワイー!」








翠くんに後ろから抱き締められながらあーんされてる。



……これって、カップルみたい…?







「みっ!翠くん離れて!」

「なんで急に?」

「翠くん好きな人いるんでしょ!?こんなの見られたら…!」

「鈍感…」

「え?」

「わーったよ。ひまりちゃんには皐もいるしね」

「……皐…」






言葉に出すといつも会いたくなる。


……でもあたしは拒んだ。

会いたいよ……皐。