「うぅっ…」
屋上に座り込む。
ポタポタと地面が黒くなる。
……涙なんか、出ないでよ。
皐の前で泣くつもりなんてなかったのに。
笑顔で言うはずだったのに。
最後くらい綺麗でカッコつけたかったのに。
――泣きたくなんてなかった。
「大好きだったの…大好きなのっ…に…!」
“だった”なんて過去形に出来ないよ。
こんなにも好きで好きで…仕方ないんだもん。
皐は過去にできてもあたしは出来ない。
皐を忘れるなんて出来ない。
――大好きで、恋しくて仕方ない。
「あぁ〜って…ひまりちゃん?」
「み、どりく…ん…」
「…俺、サボりにきただーけ」
「…ふぅ…うぇぇん…」
「………」
ただ隣に座っている翠くん。
あたしの周りは優しい人が多い。
多いから、困るんだ。
多いから、自分に甘くなってしまう。
でもね、あたし決めたんだよ。
「落ち着いた?」
「…う、ん…」
「皐となんかあった?」
「…別れたの…」
「……は?」
「別れたの…皐と…」
「別れた?…あいつも納得してた…?」
「…うん…」
本音を言えば…少し期待してた。
“別れない”って言ってくれるんじゃないかと。
“好きだ”って言ってくれるんじゃないかって。
だけど皐は、納得した。
別れることを受け入れた。
やっぱり好きじゃなかったんだって痛感する。
「…なんで泣くの?」
「え…?」
「別れたいから別れたんじゃないの?」
「……っ…」
「別れたくなかったの?賭けてみたの?」
「……っ、ちが…」
「だけど負けた、の?」
「違うっ…!」
「違うならどうして泣くの?どんな理由?」
「……っわかんないよ!」
「簡単に“別れる”なんて言うなよ!」
「…っ…」
「賭けなんてしてんじゃねぇよ!アイツは受け入れるに決まってんだろ!」
「わかんないよ、翠くんには!」
「………」
「浮気され続けるのも…好きじゃないってわかってて付き合うのも…」
「………!」
「どれだけ痛くて苦しいのかなんて翠くんにわかるの!?」
「……いや…」
「わかんないでしょ!?」
わかるはずない。
……だって翠くんは思われてるから。
わかるくらいに愛されて、愛してあげてる。
そんな人にあたしの気持ちなんてわかるはずない。

