一途な彼女×浮気な彼氏


「ねぇ、皐」

「んー?」

「あたし皐のこと大好きだったんだよー」

「……は?」










“だった”?

なんで過去形?

……なぁなんでだよ…。

箸を持つ手にも力が入る。












「皐、別れよう」

「…っ…!」












鼻腔がツーンとする。


…あぁ、壊れた。

あぁ、遅かった。

もう、取り戻せない距離まで行ってしまった。

もう、修復出来ない程の溝が出来てしまった。












「……わかった…」

「大好きだったよ」

「…わかってるっつの」

「皐の声も、手も、ギュッとされると泣きそうになる温もりも…」

「………」

「甘いキスも、冷たい皐も、優しい皐も、無邪気に笑う皐も」

「………っ」

「本当に……っ大好きだったの…っ…」

「…っひまり…」












瞳からポロポロと涙を流すひまり。

止めどなく溢れる涙が何度もひまりの頬を伝う。



……俺はまだ苦しめてる。

俺の前でこんな風に泣くひまり…見たことねぇや。

いつもこんな風に泣いてたのか…?




そう思うと、なんだかどうしようもない罪悪感に包まれる。












「ごめん…ごめん…」

「…遅いんだよっ…皐は…」

「ごめん…」

「いやになるくらい大好きだったの…」

「……あぁ」

「もう、忘れたい」












こんなひまりを見ればもう、なにも言えない。


“好きだ”なんてもう言えない。