「ここです」

「…シンプルだな」

「お姉ちゃん一人暮らししてるんでこっちは必要最低限のものしかないんです」

「一人暮らし!?」

「そうです。知りませんでしたか?」

「…知らなかった…」

「お姉ちゃんの家に今度行ってあげて下さい」

「え?」

「お姉ちゃん、あれでも寂しがりやだから」

「……わかった」












お姉ちゃんの髪をフワッと撫でて微笑んだサツキさん。


優しく、愛おしいものをみるような瞳でお姉ちゃんを見る。

でもどこか真剣な、瞳。


綺麗だな、と思った。

透き通ったその瞳が。

あたしの周りには綺麗な人が多すぎる。



……あたしは、濁ってるのかな…?













「俺、少しだけここにいたいんだけど…いいかな?」

「…はい。」

「ありがとな、ひまりちゃん」

「……っ」












頭をクシャッとされた。

そしてあの爽やか笑顔。


……お兄ちゃんみたい。

あたしにお兄ちゃんがいたらあんな感じなのかな〜?

でもひな姉ちゃんだけであたしは満足だ。












「あれ?アイツは?」

「もう少しだけお姉ちゃんの側に居たいって」

「アイツ…まじで好きなんだな」

「そうみたいだね…」

「…んじゃ帰るかな俺は」

「え!?」

「洗い物しといたから」

「で、も…」

「大丈夫だって。ひながいんだろ?」

「……だけ、ど…」

「ひまりはひなより寂しがりやだな」

「……っ…」












だって、寂しい。

秦が、居なくなるのは寂しい。

……行って、ほしくない。


あたしって、わがままだ。

付き合ってもないのに…。

こんなことじゃ秦の恋路を邪魔してるだけになる。













「秦…ごめんなさい…」

「ん?いやなに?」

「あたし…秦の邪魔してる、よね…」

「は?」

「秦には好きな人が居るのに…あたしが離れないから…」

「離れないから、なに?」

「あたし…邪魔してる…」

「俺の、恋を?」

「……うん」











甘えてきただけだ。

秦が何も言わないからって。

秦が頼りになるからって。


あたしは……甘えてきた。


そんなの彼女でもないあたしが…していいはずない。