一途な彼女×浮気な彼氏


「ご、ごめんねっ…用事は…?」

「あ、まず…場所移動していいかな?」

「えっ……」

「いやその…ここじゃ言いにくいんだ…」

「そ、そっか…。わかった、行こう!」

「……うん」










本当は嫌だけど。

言いにくいなら仕方ない。

用事があるんだしね。










「ここで…いっかな…」

「………」










連れてこられたのは屋上。

なんか久々に来た気がするなぁ…。

やっぱり、天気がいいなぁ。


あたしの心は…雨は止んだけど曇り空だ。

またいつ降りだすかわからない、雨。










「ひまりちゃん」

「はい」

「僕、ずっと君の事が好きだったんだ」

「へ…?」

「彼氏いるのわかってる。でも、僕と付き合ってくれないかな?」











どうして?

それは間接的に“別れろ”って言ってるよね?

今ね、やっとほんの少しだけ自惚れるようになったの。

だからね、答えは決まってるんだ…。










「あの…あたし…」

「ひまりちゃんは今幸せじゃないだろう?」

「え?」

「あんな浮気ばっかりする最低野郎は捨てなよ。」

「………」

「ひまりちゃんの株が…いや価値が下がるよ?」










株?価値?

――なんの話をしてるの?


人に株とか価値があるの?

そんなのあるはずない。

どうして皐といたらいけないの?

株なんか価値なんか下がったってどうでもいい。


側に居たいだけだもん。











「人に株も価値もないと思う。」

「っ、ひまりちゃんはわかってないよね」

「何をですか?」

「皐って奴がなんで浮気するのか」

「っ…!!」










ドクンと心臓が高鳴る。

嫌だ嫌だ、聞きたくない。


――聞いちゃ、いけない。

わかってるのに体は動いてくれない。











「そんなの明白だ」

「や…めて…」

「自分の彼女が」

「やめて…!!」

「好きじゃないからにきまってる。」

「――………っ…」

「別れたいからに決まってるんだ」

「……っう…」











聞いちゃ、いけなかった。


さっきまでの自惚れがもう出来ない。

もう自惚れる事なんて、出来ない。


“好きじゃない”…?

“別れたい”から…?


ねぇ、皐もそうなの?

皐の浮気する理由もそんな明白で単純なものなの?



助けてって言ってももう皐には助けられたくない。











「ひまりちゃん、僕と…!」

「お付き合いは出来ません。好きな人が居るんです」

「それならさっき…」

「あたしはあなたを好きになれません。」










……もう心が、痛い。