「帰れなくなった」
「うん、そっか」
そう言ってあたしは笑う。
……知らない風に。
あたしがあんなこと言ったから?
“あたしが皐の中で1番だったらいい”
なんて言ってしまったから浮気は酷くなる一方なの?
「ひまり?」
「あっ…ごめんね!なに?」
「明日のデート無理になった」
――またですか。
何回目かな?
回数もわかんなくなるくらい断られる。
他の女の子とデートするんでしょ?
見ちゃうもん…いつも。
断ったのに、他の女の子とデートしてるところ。
…1番最初に約束をしたの…あたしじゃなかったのかな?
って思うようになってしまった。
あたしは皐の彼女。
――でもそんなのは肩書きだけ。
「ひまりーっ」
「秦!!」
「…“シン”じゃん」
「よっ、皐!」
「秦、どうしたの?」
秦はあたしが最も男子の中で仲良しの人。
秦もかっこよくて。
茶髪でちょっと着崩した制服。
がっしりした腕。
女子はたまらないらしいです。
あ、宇美情報ね。
「秦今日もかっこ…」
「ひまり」
「へ?」
“かっこいいね”って言おうとしたけど皐に阻まれる。
日課の台詞が言えない。
「聞かせろよー皐!!」
「はっ?」
「…皐?機嫌悪い?」
「あ?別に。…んじゃ行…」
「ひまり一緒に帰…」
「俺と帰るんだよ、バーカ」
「はぁ!?お前遊ぶんじゃねぇのかよ!?」
「悪い、遊べなくなった。また今度な」
「おっけい♪またねぇ皐ぃ♪」
…っていいの!?
そんなあっさり!?
ね、粘らないの!?
「…だからシン、諦めろ」
「待って、皐」
「…ん?」
さっきよりも優しい瞳。
さっきの瞳は殺気に溢れてた。
…怖かった。
「あたし秦と帰るよ」
「ひまり!?」
「…なに言ってんの、ひまり」
突き刺さる冷たい瞳。
…だって元は皐と帰る予定じゃなかったもん。
あのこだって…一瞬悲しそうな顔してた。
なんだか…見てるこっちも胸が痛くなった。
「だって…」
「…ひまり。来い」
「えっ…ちょ…皐!?」
皐に引っ張られ教室を出る。
…放課後の廊下は全然人が居ない。
グラウンドからの部活生徒の声が響く。
…どこに連れてくの?
「ひまり。」
ダンッと壁と皐に挟まれる。
…なにこれ///
ち、近いよ…皐//