「でも努力したんだから後悔はしないでしょう?」
「え…」
「だって運命だもん。後悔しなければ全部正解だよ」
「…じゃあ…」
「別に行きたくないなら行かなくてもいいと思うよ」
「それじゃあ…」
「矛盾してるって?」
「……あぁ」
「だって後悔するもん、そんなの」
「……後悔、か」
「後悔なんてしたくないからあたしは毎日を精一杯生きるの」
「…そっか。んじゃ俺もそうしよ」
「うんっ」
どんなに努力しても報われない時がある。
それでも十分な努力をしていれば後悔なんてしない。
恋だって、後悔したくない。
でも……いつもあたしは後悔してる。
あたしはどうしても後悔してしまう。
「じゃあ明日俺と一緒に部活行くぞ」
「え?委員会…」
「保健委員はその日からの仕事なんてないから」
「そうなんだ…」
「それくらい調べとけ」
「ごめんね…」
「まぁ皐が知ってるだろうな」
「…うん」
皐……今何してるのかな?
浮気に決まってる…か。
女の子とイチャイチャしてるの…?
女の子とキスしてるの?
……それとも家に連れていくの?
結局皐の家に行けてない、あたし。
思い出すから。
また浮気を見てしまうんじゃないかって思うから。
思っちゃうから……あたしは避けてしまう。
「さ、帰るかな」
「泊まってけば〜?」
「おばさんたちは?」
「帰ってくるの朝だし」
「やっぱり忙しいな。」
「まぁ仕方ないんだけど」
「ふぅん…ま、泊まってくわ」
「じゃあたしはお風呂入りまぁーす」
「はーいっ」
必然的に秦と2人きりになる。
でも何度もあるから緊張はしない。
…なんて言ったら怒っちゃうかな?
“失礼だな、ひまりは”とか言って。
「秦っ」
「ん?」
「宿題、教えて?」
「ひまり頭いーじゃん。」
「もう〜ノリ悪い!」
「ひまりがマネージャーやるとか言うからじゃん」
「どうしてやっちゃ行けないの?」
「自覚しろ!お前は可愛いわけだ!」
「かわっ…///」
「つまり可愛い=モテる!わかるか?」
「…モテ、ない…」
「無自覚が」
「なによー!やるったらやるの!」
「俺らから離れんなよ?」
「離れないもん!」
「……っ可愛すぎ」
「え?なに〜?」
「なんでもない。で、皐もちゃんと覚えてるんだろ?」
「皐から一緒にやろって言われたんだもん」
「皐が?…へぇ、やるじゃん。本能狼」
まただ。
その“狼”ってなんなの?
いるわけないじゃんか、狼なんて。
狼男って言いたいのかな?
でも…実際に日本にいるわけないし。
外国はわからないよ?
「ひなに好きなやつか」
「寂しい?」
「……さぁ?」
「ケチッ!!」
妖しく笑って誤魔化す秦。
それは、ズルいよ。
…気になっちゃうもん。
“寂しくない”とも取れるけど、“寂しい”とも取れる。
その曖昧な回答はズルい。
「ひまり?」
「…寂しい…?」
「…その聞き方は反則じゃねぇ?」
「え…?」
「上目+潤み…マジか…」
「??」
「ひまりはわかんないに決まってるか。」
「…寂しい、の?」
「寂しくない。ひなにだってそろそろ現れるだろ」
「…運命の王子様?」
「そ。王子様!」
「……っ//!」
ニコッと無邪気に笑った秦に胸が高鳴る。
……カッコいい。
秦がカッコいいのはわかってる。
だってモテモテだもん。
「秦ってやっぱりカッコいいね」
「は!?」
「今ドキってしちゃったよ〜」
「…ばーか、うっせーよ」
「………」
今、好きな人のことを考えた。
言葉が乱暴だもん。
あたしってばワガママだよね。
皐の彼女でいたいけど、秦の隣を譲りたくない。
最低、だよね。
これじゃあ…秦の恋の応援なんて出来ない。