一途な彼女×浮気な彼氏


「で、今日は鍋ね?」

「うんっ!!」

「そんなに鍋食べたかった?」









クスッと笑うお姉ちゃんは“大人の女性”だった。


前から大人っぽかったけどなんだか磨きがかかったようだ。



きっと皐のタイプ。

…皐は大人っぽい人が好きだもん。

あたしみたいなお子ちゃまじゃなくて。










「鍋、久しぶりなんだもん」

「お母さん夜勤?」

「……うん」

「そっかぁ。いっそ家に来れば良いのに」

「へっ!?」

「家なら寂しくないよ?」

「…お姉ちゃん…」

「なんてね?…ひまりはここに居たいんでしょ?」

「うんっ…!」

「かーわい。んじゃ鍋食べながらひまりの話聞いちゃお♪」

「味噌味?」

「さぁ?食べてから♪」









どうしたら大人っぽくなれる?

あたしはどうしたら皐のタイプに近づける?


――教えて、皐。

あたし頑張るから。

皐に振り向いてもらえるように……。


って昔は思っていた。

きっと誰よりも。









「ひまり?」

「あっ、箸持ってくるね!」

「…秦くん呼ぼうか?」

「え…?」

「ひまり、秦くんに来てほしいんじゃないの?」

「…し、ん……っ」









名前を言えば涙が溢れてくる。

どれだけ秦はあたしにとって大きな存在なんだろう。

名前を聞くだけで涙腺が緩むよ。

安心しちゃうよ。









「ひまり……」

「だ、いじょうぶ…!」

「強がる必要なんてないよ?」

「……お姉ちゃんが、いて…くれたらいい…」

「…ん。わかったよ」









そう言って優しくそっと包み込むように抱き締めてくれた。


小さいときから知ってる温もり。

お姉ちゃんの香り。

なにかあればいつも慰めてくれて。

側に居てくれて。

あたしはお姉ちゃんが大好きで甘えてばかりだった。









「ひまり、鍋食べよっ!まずは腹ごしらえだ!」

「ふふっ……うんっ」

「お・に・く・♪」

「と・う・ふ・♪」

「…肉でしょ?」

「豆腐だよ!」

「え〜絶対手始めは肉でしょ」

「豆腐だよ!柔くて美味しいもんっ!」










鍋をやると小さいときからコレ。


肉からか豆腐からか。

絶対豆腐だよ!!

お肉なんて野暮だよ!

鍋に対しての冒涜だ。









「お肉から食べないと意味ないから!冒涜よ、冒涜!」

「いーや豆腐!!」

「どっちでもいいだろ」

「「よくないっ!!」」

「……って秦!?」

「呼んじゃった〜♪」







そこにいたのは紛れもなく秦。


さっきまで一緒にいた人。