「…おーっす」

「遅いよなー、皐は(笑)」






いつもと変わらないように見える秦。

……でも違う。

いっつもこいつといりゃわかる。

秦との付き合いは9年だ。

――わかりたくなくてもわかっちゃうってやつ。







「なに怒ってんの?秦。」

「…へぇ?聞くんだ、皐は」

「……んだよ」







秦のこういう余裕たっぷりなところが嫌いだ。

…いつも羨ましかった。

秦が怒ってるのを見分けるのは難関だ。

――でもわかる。

小3からの付き合いだから。







「皐さ…なんでひまりと帰んなかった?」

「……は?んなもん…」







――お前と帰らすのがやだったから。


なんて言えねぇよ。

俺だって余裕な感じで…。





「んなもん…なんだよ?」

「気分が変わったんだよ」

「……あ゛?」







今までこんな秦の声は聞いたことがない。

低く威圧感のある、声。

……やっべ。

怒ってんじゃん。

怒りゲージ10あったらもう…9.5。

…もう0.5しかねぇ。







「…なぁ何度ひまりを泣かしたら気が済むんだ?」

「…あ?だから知らねぇよ、そんなの」

「はっ?…それでも彼氏かよ?」

「…ってめぇ…何が言いてぇんだよ?」

「…ひまりを苦しめるなって何度言った?」

「さぁ?…んなのいちいち数えねぇし?」

「……別れろよ」

「てめぇ…っ…秦!!」

「俺だってこんな事言いたかねぇよ!!」







……なんなんだよ。

別れろ?……っざけんな。

誰が別れるか。

俺は…ひまりが好きで仕方ないんだよ。

そんなひまりを俺から手離せるわけねぇ。

……つか手離さねぇし。