――ガチャ……
「翠ん家だ」
「…お前はその言葉使いどうにかなんねーのかよ」
「無理。」
「……そー」
「翠っ、今日あたしどこの部屋?」
「どこでも?今日母さん帰って来ねーし」
「えぇ!?夜勤?」
「そー朝かえってくんじゃねぇ?」
「そっかぁ」
俺の父さんは俺が中学生のときに亡くなった。
交通事故だった。
ボーッとしているうちに父さんが焼かれて骨になって。
棺の中にいる父さんの体は生々しい傷跡が残って見ていて痛々しかった。
式が終わって、家に帰って、涙が溢れた。
――もう父さんはいないんだと実感したから。
「翠…?」
「……っく…」
「翠みーっけ」
「…う、み…?」
そう言って宇美は俺を後ろから抱き締めてきた。
包まれているようで安心した。
「…泣きなよ。」
「なんだよ…お前は…」
「んー?翠が泣いてるのになにもしないわけないでしょ?」
「…っ…」
「おじさんもきっと悲しんでると思う。でもさ、翠が今日枯れるほど泣いて明日から笑顔で居ればおじさん笑ってると思うな」
「……わかってる」
笑うよ。
枯れるほど泣くよ。
…だから側に居ろよ。
なぁ宇美。
この時宇美がすげー頼もしくてまた1つ宇美を好きになった。
「…り!翠!」
「あ、なに?」
「なにじゃなぁーい!勉強しよって」
「……は?」
「今日サボるんだから一応勉強はしとこうよ」
変に真面目なんだよな、こいつ。
…サボればいいだろ。
つか俺は今日、宇美を甘やかすつもりだし。
勉強とかぶっちゃけしなくても余裕だし。
「やろ?」
「宇美がやろ?って言うとヤろに聞こえる」
「はぁ!?あたし誰でもいいわけじゃないし、淫乱じゃない!!」
「……知ってるよ」
反応が可愛すぎていじめたくなる。
これは本当に昔からだからもう変えることは出来ない。
残念ながら。