突然、明るく元気な少年の声が聞こえてきた。


思わず全員が声の方向を見る。


濃い紺色の袴姿の、14~15歳くらいの男の子。


ほんの少しだけ茶色味のある髪と目。


抜けるように白い肌。


ニコニコと微笑みながら廊下の向こうに立っている。


「これは・・・見事な冷気の術だなあ!」


感心したように、この冷気の中をまるっきり平然とした顔でこちらに歩いてくる。


この子・・・いったい誰?


「氷血の一族の・・・当主殿か?」


オヤジのひとりが呆けた声でそう呟くのが聞こえた。


門川君がピクリと反応する。


あたしの頭にも引っかかった。氷血の一族?


どっかで聞いたことある。氷血、氷血って・・・


・・・あっ!!


門川君のお母さんの・・・!!


少年はスタスタと門川君の前まで進み、白く染まった床に跪いて平伏した。


「お初にお目にかかります。氷血一族が当主、凍雨(とうう)にございます。なにとぞお見知りおきを」


言い馴れないらしい敬語を、それでもハキハキと元気に話す。


門川君は両目を見開き、まじまじと男の子を見つめた。


「君・・・君が、氷血の一族の当主なのか?」


「はい。先代の父が早くに亡くなり、ぼく・・・私が就任いたしました」


「君が氷血の・・・顔を、見せてくれないか?」