「じゃ、放課後よろしくー」 「はいはい」 上原君も自分の席へと戻って行った。 くるみは手を振った後、私の方に向き直った。 「汐音?どうかした?」 「え?あー、うん、何でもないよ」 ボーっとしている私の肩をトントンと叩くくるみ。 私は平静を装って、笑って答えた。 涌井君のエナメルバッグに、もう一つ真新しいマスコットがついていた。 昨日はついていなかったのに……。 誰かが作った、野球のボールの形をした、マスコット。 赤い糸で『必勝』と刺しゅうされている。