唇が、覚えてるから


覚えがあった。

私を見て、海翔君が固まった瞬間。


それは。

私のことを、長澤まさみに似てるだなんて言いだしたときだ。


「あの時……」


あの苦しいお世辞は、そういうことだったんだ……。

あの時は海翔君に少し不信感を抱いてしまったけれど、ちゃんとした理由がわかり胸が熱くなる。


「そしたら、琴羽ちゃんが祐樹を知ってるって言うだろ。驚いた。しかも今も会ってるみたいな言い方で……。俺もだけど、みんなも多分ギョッとしたと思うよ」


そう言って、海翔君はまた祐樹の遺影に目を向けた。


「でも俺、琴羽ちゃんの話、信じたよ。宇宙人とか幽霊とか非科学的なことは基本全く信じない俺だけどさ。

祐樹がもしかしたら……琴羽ちゃんの前に…って」

「海翔君……」

「不思議と、怖いとも思わなかった」