唇が、覚えてるから


まだ温かいその手を握り締め、顔を近づけた。


「祐樹、私だよ。琴羽だよ」


祐樹の手を私の頬に持っていく。

昨日も、こうやって包んでくれたよね……。

何度も何度も頬にこすり付けた。


反応はないけど

きっと、祐樹は感じてくれるはず。



もう、誰も何も言わなかった。


私の周りで、最後の処置をそれぞれが続けていく。




その時、


「君は……」


正面から聞こえた低い声に顔をあげると。


そこには


「あっ……」


祐樹に良く似た、切れ長の目が印象的な背の高い人。

───祐樹の、お父さんだ。