唇が、覚えてるから


自分の声の音量に、耳鳴りがした。

周りの音は何も聞こえなくて、その分闇が怖いくらいに私を包む。

祐樹は、じっと私の目を見つめてた。


………祐樹、お願い。


「……わかって……琴羽」


それでも、変わらなかった。

祐樹の答えは、変わらなかった。


「俺はもう、ここには居れない……」

「……っ…」


……なら。


「じゃあ……もう一度やって……?」


フラフラした足取りで、祐樹の体を押す。


「お母さんのために、出来たなら……」


分かってるよ。

お母さんには敵うわけないって。


「今度は………私のために生きて……?」


それでも、私は祐樹を諦めたくないから。


「もう一度神様にお願いしてよっ……!!」


こんなにも、好きになっちゃったんだから。


「私の側にずっといられるようにお願いしてよおおおおおっ……!!」


心なんてとっくに折れそうで、声を出すのですら苦しいけど、そう言ってすがりついた。