唇が、覚えてるから


それは帰り際、今日一日のまとめの日誌を書いているとき。


「中山さんの息子さん、今朝危なかったみたい。でもまた持ち直したらしいんだけど」

「いよいよなのかしら……」


ふと、ペンが止まる。


最近は、実践以外のことに関わることはなくなっていた。

それでも中山さんのこととなると、耳が会話を拾ってしまうから……。


「あの若さで本当に気の毒。きっと、いいお医者さんになったんだろうに」

「聞いた話だと、樟大附での成績もずば抜けてたみたいだしね」


……樟大附?

中山さんの息子さんが?


そのよく知る高校の名前にスルーすることが出来ず。


「あのっ、中山さんの息子さんって樟大附の生徒さんだったんですか…?」


会話をしていた若い看護師さん達に割って入った。


だって……それって……

祐樹と同じ学校だから。