唇が、覚えてるから



気づいたら、朝だった。

どんなときだって朝はやって来る。

誰もが平等に与えられるもの、それは時間。

このまま朝が来なければいいのになんて願いは叶うわけもなく、朝日はいつものように、この部屋を白く染めていた。


目覚めた瞬間に、頭の中にリピートされる祐樹の言葉。

『琴羽になんて出会わなければ良かった』

……なんて目覚めの悪い朝……。

結局祐樹にとって私は本当に暇つぶしで、ただ遊ばれていただけだったんだ。

……ううん、違う。

同じ部屋で一晩過ごして何もなかったんだから、遊ぶ価値もなかったんだね。

昨日のデートは、暇つぶしの集大成だったわけか……。


可笑しすぎて、笑いさえ込み上げる。


「ふっ、ふははっ……」


乾いた、笑い。


「琴羽……」


心配そうに真理が私を見ていた。


………あ…。

私がこんなんじゃ、真理にも気を使わせるだけ。


「昨日はごめんねっ。私、もう大丈夫だから!ほら遅れちゃうよ?」


シャツに袖を通して、まるで失恋したのは真理かのように佇んでいる彼女をせかす。


トーストしたパンを食べて、オレンジジュースを飲んで。

うん。食欲だってある。大丈夫。


「さ。今日も一日頑張ろう!」


今度は無邪気に笑って見せた。