唇が、覚えてるから


***



「わぁぁぁっ……!!!!」


胸の中に秘めておくなんて無理で、部屋へ入ってからも涙が止まらなかった。


「あったま来る!何そいつ!こんど樟大附の奴に会ったら文句言ってやる!」


怒りを前面に出した希美の横で、真理は黙って私のことをずっと抱きしめていてくれた。


「もう忘れちゃいな。笑顔じゃない琴羽なんて、琴羽じゃないから……」



忘れられたら……

どんなにいいんだろう。


私は真理の胸の中で、そのまま眠りについてしまった。