胡紗々は眠ろうとしていたところを、引っ張り出されて夜着のまま聖智の治療をした。


「すみません、胡紗々先生しかこの時間にお願いできないと思ったから・・・。」


「いいんですよ。まだベッドに入っていませんでしたから。
それにしても、この傷はひどいな。

傷そのものは大きくはないが、この黒い欠片をとりのぞくのが大変だ。
とりのぞくたび、彼は痛みでもがき苦しむだろうし・・・。

なんとか早く取り除かないと。
いちこくん、君もピンセットで欠片を取り出していってくれないか?」


「わかりました。欠片をはさんで取り出せばいいんですね。」


「で・・・その悪魔くん?聖智が大きく体を動かさないように押さえていてほしいんだけど・・・。」


「なんで、俺様が・・・。」


「お願い、リズ。聖智さんが痛くて暴れちゃったら、私はじきとばされちゃうわ。
お願いだから、押さえるのを手伝って。
リズは力持ちだからできるでしょう?お願い・・・。」


「済んだらキスしてくれるか?」


「うん。」



「だ、だめだ・・・そんな・・・けいやく・・・いっ!」


「契約って?」


「いえ、リズはこうみえてあまえんぼなんで、契約って名前のキスをほしがるんです。えへへ。」


「へぇ。大男な悪魔がそんな子どもみたいなねぇ。
よく飼いならしてるんだな。

まぁとにかく、聖智を助けよう。口を怪我しないようにさるぐつわもさせてもらうよ。
じゃ、取り出そう。」


「うぐっ・・・ううっ・・・・ぐぐぐぐ。
うううううううーーーーーー!っ。」


「先生、聖智さん気を失っちゃいました。」


「大丈夫だ、今のうちに欠片をたくさん取り出そう。」


聖智の背中から黒い欠片をすべて取り出し終わると、胡紗々はもう一度背中を消毒して、化のう止めの薬を注入した。


「これで大丈夫だろう。お疲れ様。」


「いえ、先生こそもうすぐ朝なのにありがとうございました。
リズ、お疲れ様。」


「なぁ・・・外の空気吸おうぜ。」


「うん。」


診療所の屋根に上ったリズといちこは、並んで座って明け方の月を見上げた。

「俺のキスは毒じゃねえ・・・。退治屋の連中が心配してるのはわかってるさ・・・。

だから試してみてくれないか?
俺のキスがマジやばいって思ったら、逃げてくれていい。
すぐにピアスをこすれ。

俺はおまえに普通に触れたいんだ。
もう200年以上生きてきて、こんな気持ちになったことなんてない。

本の中に捕らえられ、何かがおかしくなった。
人間の女に契約以外でキスしたくなるなんて。」


「リズ・・・悩んでたんだね。うん、いいよ。
キスしてみて。」


「いちこ・・・。」


いちこの唇にリズナータの唇が重なり、いちこの肩が少し震える。


(冷たい感触・・・人のキスとは違うわ。
それに、熱くなってとろけて意識がなくなるなんてこともない・・・)


リズナータは舌をいちこの唇の裏へとすべりこませていく。

すると、半開きになったいちこの瞳が赤く輝き、いちこの方からリズナータを求めてきた。


「うっ・・・いちこ・・・。なっ・・・」


(どうしたんだろう。すごくリズがほしいわ。
リズを舐めまわしたくなってくるなんて・・・私って変・・・。)


いちこはリズの体にのしかかって、リズのはだけた胸に舌を這わせた。

「い、いちこ・・・そんなこと。おい、いちこ・・・だめだ。
それ以上、やらなくていいって。
あっ、もう、もう下へいっちゃだめだぁ!」


「リズ、リズ・・・好き。」

「あああ~~~だめ、いちこそんなはしたないことはやめてっ!
だめだって。娘がいきなりそんなとこ・・・あっ」


「どけっ!」

リズはいきなり後ろから首ねっこを蹴り飛ばされ、屋根から転げ落ちていった。


「うげっ・・・って・・・聖智おめえ・・・。なんで。」


「ここは私にまかせなさい。
いちこ、私を舐めなさい。」


いちこは聖智の言葉をリズの言葉だと思ったまま、聖智の左胸に舌を這わせた。

「あっ・・・やはり・・・。
いちこ、少しの我慢ですよ。
氷牙淫滅糸!」

聖智はいちこの体を蜘蛛の糸でぐるぐるまきにした獲物のように、動きを封じると、いちこの口の中に口移しで何かを飲ませた。


「うっ・・ごくん。あれ・・・私なんで・・・?
リズは?」


「よかった。もう大丈夫です。ちょっと毒にあたったのです。
すみません、説明は後日。私は・・・うっ。」


「聖智さん!あ・・・私のせいで聖智さんが・・・。」