「日本を発つ前に、旅行中に盗まれたら嫌だからと言って、預かったのよ」 「そうか」 そういえばそんな感じがする。 「いい時計よね」 「うん。 そう。 気に入っているんだ」 自然と口から出た。 「そう」 贈り主を知っているライナは柔らかく微笑んだ。 ああそうだ。 引き出しに入っていたのはこれだった。 これを探していたんだ。 涼は腕時計をはめ変えて、自分でも知れずにほっと息を吐いた。