「ふぁあー……」

欠伸が出た口を、手で塞ぎ、横目で壁時計を見た。夜の十時過ぎ…。

そろそろ、遅くなってきたし。それに眠くもなってきたし…寝ようかな……。

私は、ベットからゆっくり起き上がり、部屋の電気を消した。

「あー……。…真っ暗で見えない……」

私は、目がなれるまで、そこに立っている事にした。

私が、少しの間、ベットの近くの(ベランダのドア)大きな大きな窓を見ていると。満月より、少しかけた月の光で照らされている黒い人影を私は見てしまう。


「……誰だろ………」

何故か不思議と、恐怖心はなかった。それは、私がバカだからなのかもしれないけど。

私が、ずっとその人影を見ていると。その人影は、一瞬目を逸らした瞬間に消えていた。

「………も、もしかして不審者?!」

今頃、事の重大さに気付く私。もしも、あの人影が不審者だったら…。

「……あ…。でも、それだったら、まず私の部屋に入ってくるよね。…そこに、いたんだし…」

…まぁ、私の幻覚だったって事にしておこっと……。

「そろそろベットに戻ろっと……」

私は、気をつけながら、ベットの近くに行き。ベットに横たわった。


「…………ふぅ」

私が、息を吐くと。ギィ……──と、窓が開く。

「………………」

え?……誰?

ゆっくりと、足音が私に近づく。ギシッと、誰かが、私のベットの上にあがってきた。 

そして、その人は、私の真上にきた。月は、雲に隠れ、丁度顔が見えなかった。

「ちょっとの間、動くなよ……」

この声……。

「……藍さん?」

「藍じゃねぇよ…。いいから、黙ってろ」

藍さんじゃないらしい。では、この方を、藍さんもどき、とお呼びします。


藍さんもどきさんは、私の首に何か冷たくて細いチェーンみたいなのを、付けた。

「くそっ……。上手くつかねぇ……」

「あ、あの……」

これは、……ネックレス?

「なんだよ……」

「…私、首あげますか?」

「………いや、いい…」

そう言うと、藍さんもどきさんは。私を抱き締めるようにして、ネックレスを付けてくれた。

「……これ付けてれば、大体のヴァンパイアは近付けねぇ…。…だから、少なくともお前が襲われる可能性が低くなる……」

藍さんもどきさんは、私をゆっくりと、ベットに寝かせる。

「……そうなんですか?」

藍さんもどきさんが、ネックレスの飾りを優しく触る。

「あぁ……。でも、それでも近付けれる奴らがいるけど……。そんな奴らからは。俺が守ってやるよ。バーカ……」

不覚にも、藍さんもどきさんに、私は少しドキッとしてしまった。

「……ありがとうございます」

バカって、言われたけど…。でも、その言葉は、何故か安心出来て。それで、信用出来る…。

「因みに、ここの兄弟は皆近付けれる…。…油断するなよ」

「………はい」

「…物分かり良いな。……じゃあ、俺はもう行くな。…ま……、じゃーな……」

藍さんもどきさんは、また、と言おうとしていた。

「……さようなら。…ありがとうございました…」

「………あぁ……」

藍さんもどきさんは、窓をまた開けて、どっかに降りて行った。

その時、私は一瞬見えたんだ。


見慣れた赤髪が…──。