ザワザワと少し騒がしいお昼の教室。クラスの人達は段々と新しいクラスメートに慣れてきたのか、ちらほらと仲良くお話している場面が見れる。

そんな教室の真ん中で伯一先生が手を軽く叩く。

その音にクラスの人達はシーンと静まり返る。そんな私達をみて伯一先生はニコッと微笑んだ。

「今日は来月に開催される体育祭でどの種目に出るかを決めたいと思います。私達のクラスは赤組。そして、今年の体育祭は───」

伯一先生はテキパキと体育祭の話を進めていき、気づけばクラスの皆の出る種目は決まった。

「では、自分の種目をもう一度確認してね。そして、確認が終わったらもう帰って大丈夫よ」

伯一先生がそう伝えると、クラスの人達はゾロゾロと帰る準備をしていく。

確認ですか…、えっと確か…。私と裕君は玉入れで…。愛希君と翔君は二人三脚。王神君は借り物競争だったような気がします!

ちゃんと聞いていたから間違いはないですよね…多分…。

…では、もう帰る準備を…。

そう帰る準備をしようと席を立った時、伯一先生は小さくあっ…と声をもらし。

「…因みに明日からは放課後からクラスごとに練習出来る場所の割り当てが発表されるわ。時間と場所を効率よく使って赤組の優勝を目指しましょうね!」

伯一先生は片手の拳を高く挙げて、おー!と声を出した。それに続くようにクラスの人達は、おー!と伯一先生に負けない位に大きな声を出す。

私も皆の反応から遅れないように伯一先生のマネをした。

…新しいクラスメートとの体育祭。…今の所、不安しかないですが…。私は私なりに精一杯頑張りたいと思います!

そう意気込みをしてから、私は帰る準備をした。

「優、また明日の」

「はい!また明日です!」

王神君は私に元気よく手を振る。私も王神君に負けないように元気よく手を振り返そうと手をあげた。

…けれど、後ろから裕君から手首をガッと強く掴まれ手を振り返す事が出来ませんでした。

それに裕君は王神君にアッカンベーをしてから舌打ちをしてしまいました…。

王神君、怒ってないといいですけど…。

王神君の事を考えながらも、私は裕君の方へとチラッと視線を向ける。

丁度、裕君も私の方へと視線を向けようとしていたのか、バチッと目が合う。すると裕君は私と目をそらして私の手首から手を離した。

そして裕君は小さくまた舌打ちをすると、私の事を睨む。

「王神に手振る時間あるなら、早く帰る準備して。遅い」

「す、すいません。すぐに準備します!」

裕君は今にもキレそうな声。

裕君の機嫌をこれ以上損ねないように私はいつもより急いで帰る準備をする。

「裕ひどーい!優が可哀想だよ!もっと優しくしなきゃ優に嫌われるよ!」

私と裕君の会話を聞いていたのか、翔君が突然私と裕君の間に割って入って私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

翔君に頭を撫でられて女子からの痛い視線を受けているけれど、翔君にやめて下さいとか言えず私はされるがままで黙っていた。

「優しい人の方が優は好きだもんね?僕みたいな優しい人!」

翔君の発言に頷いたとしても、翔君の発言に首を振ったとしても。どっちにしても翔君か裕君のどちらか片方の方の機嫌が悪くなりそうだと思った私は笑って誤魔化した。

…そうです、私の必殺技の笑って誤魔化す!です!

でも、そんな私の必殺技はきかなかったのか裕君は本日何回目かの舌打ちをして翔君を睨む。

「うるさい。翔、ウザイから先に愛希と下行ってて」

「えー。やだー。……最近、愛希すっごく機嫌悪いんだもん…。どうしたんだろうね、愛希」

そんな裕君の機嫌悪いオーラを無視して、翔君は最近、機嫌の悪い愛希君の席に視線をうつした。

すでに愛希君は教室から出て行っているので
、多分もうお迎えの車の中ですよね…。

それにしても…、もしかして機嫌が悪いのは私のせいじゃ…。あの日から愛希君とは一度も会話をしていなくて。目が合っても愛希君は私を避けるようにどこかへ行ってしまう。

なにか、私したんですかね…。

「そんなの知らないよ。…知りたくもない。…ほら、優早く帰るよ」

「……は、はい!」

裕君の言葉に考え事をしていた私はハッとして、歩き出した翔君と裕君の後ろをついて行った。