インストール・ハニー


「……青葉、ごめん。あんな風に聞かなければ良かった」

 スマホを握りしめたままのあたしの肩を、楓が優しくさする。その温かさを離したくなくて、ずっと触ってて欲しくて、無くしたくない。帰したくない。

 ナッツもシステムも捨ててこのまま居てよ……! 口に出して言えたら良いのに。


「おやすみ、青葉」

 その言葉と一緒に、腕に包み込まれる。暑いよ離して。嫌だ離れたくない。なにそれツンデレか。温かい。良い匂い。お腹の深いところがぐっと熱くなって、シャツを伝わってくる楓の熱が、あたしのと混ざり合って、どっちが上で下なのか分からなくなる。


 泣きたくなった。

 スマホを持つ手を画面が見える位置まで持って行き、戻すコマンドを親指でタップする。ふわっとと光って、あたしを抱きしめていた熱が無くなった。帰って行った。

 熱帯夜の外気は肌に張り付き、楓の熱と違っていて、剥がされそうで怖くなる。月はまだまだ明るくて、あたしを照らしていた。

 さっきまで隣に男の子が居ましたが、そこから見えていますか? 彼はいま、どこに居ますか? 居心地の良いベッドに座って、ナッツを撫でて紅茶でも飲んでいるのかな。

 スマホを通して会話ができるのだから、そうすれば良いのに。変なの。
 あたしは楓が立っていたところから離れたくなくて、だいぶ長い時間、空き地に立って空を見上げていた。





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