インストール・ハニー


 ガチャ。

 静まりかえった2人の間に突然ドアが開く音。音に飛び上がりそうになった。

「あれ、居ないから帰ったのかと。ごめんお邪魔しちゃった」

 一海だった。近くの裏口から顔を出している。別に悪いことをしているわけじゃないし一海も悪くないけど……びっくりした。

「う、ううん。お茶飲んでた。もう帰るよ。お疲れさま!」

 行こう、そう楓に言って休憩室へ急いだ。



 手早く支度をして、足早にサンライトを出てきた。

 さっきあんな風になったばっかりで、正直……気まずい。
 家までの道。もう夜遅いから誰も歩いていない。もとから静かなところだし、住宅密集地でもないから夜になると人を見かけないんだけど。

「青葉……」

 無言で歩き続けるあたしに、楓が声をかけてきた。もうそれだけで全身の血流2倍速。できれば黙って家まで帰りたい。

「な、なんでしょうか」

 なんで敬語になった。
 月は頭の上にあって、変な言い方だけど明るい夜だ。振り返って視界に入れた楓の顔も、はっきり見える。街灯のせいもあるけど。

「さっき、ごめん」

 楓って、けっこうグジグジ考えるタイプなのかも……あたしもそうだけど。似たもの同士なのかもしれないね。

「……そんなことないけど……」

 途中で楓を戻さないと。トートバッグの中にあるスマホが気になっていた。