「あれ貸して、しゅうせいえき」
「あー分かった。持って行くよ!」
言いながらスマホをタップして楓に帰って貰って、修正液を机から取って、部屋のドアを開けた。素早い身のこなし。あたしかっこいい。
「なんか誰かと喋ってた? 男の声したけど」
なるべく静かに喋ってるつもりだけど、それでも100%は無理。だから本当に細心の注意を払って……。CDかけたりとか、テレビ音量高めにしたりとか。
「ああ、あ、電話しながらDVD観てたからじゃない? 誰も居ないよ」
別に誰か居たかって聞かれてないし! なに墓穴掘ってるの!
「んーちょっと宿題間違ってペンで書いちゃった。修正液で消すの」
「明日でいいよ、返すの。あたし使わないから」
むしろあげるから、耳栓して宿題やってくれ。
身長はあるけど華奢な背中が向かいの部屋のドアに入るのを見届け、あたしは部屋に戻った。2階にはあたしと健太郎の部屋しかない。
お父さんとお母さんは1階に居る。隣に部屋がある作りじゃなくて良かったかもしれない。それだったら楓を部屋で出すのは難しかっただろうな。



