インストール・ハニー


「な、んで居るの? 戻ってきたの?」

 涙が止まらないよ。しゃくりあげが苦しいよ。

「戻ってきたよ。もうどこへも行かない。今度こそ、青葉のそばに居るよ。ずっと」

「あたしのこと、忘れたんじゃ……」

「忘れてない。だから俺の記憶、増やして。青葉の記憶を」

 抱きしめられたその確かさ、頭の上から聞こえる声。心臓の音も感じられる。本当に居るんだ。戻ってきたの。

「なんか俺、青葉にネタバレしたり研究所のこと喋ったり、規定違反ばっかりしてたみたい。役に立たないからもう行けって言われちゃった」

 あははは。なにその乾いた笑い。

「2人で、秘密を守って暮らしなさい、だってさ」

「……うっ……ええ」

「あ、青葉!」

「うわーーん!!」

 あたしは、声を上げて泣いてしまった。だって、居なくなった楓が戻ってきた。大好きな楓が、居るんだもの。張りつめていた糸がぶち切れた。もう立ってられないほど。

 支えてるのは楓の腕の力だけで、あたしは涙と鼻水を垂れ流し、泣いた。

「ほらもう、不細工になるから泣きやんで」

 涙を拭ってくれた。鼻水はやってくれなかったから、鞄からティッシュを出して鼻をかんだ。

「迎えに来たよ。青葉、帰ろう」

 思い出す笑顔が現実の笑顔になった。繋いだ手も、本物だった。