インストール・ハニー


 空耳なのは分かってる。楓の木々が風に吹かれて、ザワザワと音を立てた。それに混ざって聞こえた声。

 一瞬吹いた風は冷たくて、少しだけ肩をすくめる。


「青葉」

 閉じた目を開けるとするか。空耳っていうかこれ幻聴?
 目を開けると、さっきと同じ、右手に道路、左に楓の木々。ああ、オレンジ色で綺麗。またうっとりと見上げた。

「青葉ってば」

 後ろか。空耳は後ろから来るのか。そう思って舌打ちをしながら振り向いた。

「無視すんな」

「……マジか」

「マジ」

 ちょっと待って。あたしは制服のポケットに入れていたスマホを取り出した。アプリも起動してないし、もちろん呼び出しコマンドも無いんだけど……。

「帰ってきちゃった」

 ちょっと離れたところに、背の高い男の子が立ってる。

 頭が良いんだか悪いんだかよく分からなくて、ちょっと前まで一緒に居た。よく知ってる人で、名前は……。