インストール・ハニー


 この時期は、学校の楓の葉が色付く頃だ。

 楓の木が数本植えてある場所の隣には、桜の木が植えてある。春になるとそこの桜は濃いピンク色の花を咲かせる。春は甘い季節の象徴で、全てを覆う。

 新しい季節になる時に咲く、桜。あたしが高校3年生になったら。この制服ともあと1年ちょっとかと思うと少し寂しいな。真新しい制服を着ていたのがついこの間のようだ。

 学校へと向かう道。家へ帰る道。楓と歩いた道。駄菓子屋のおばあちゃんと仲良く喋ったりしてたんだもんね。思い出すと微笑んじゃう。

「ああ、綺麗」

 楓の葉は、涙が出るくらい明るい綺麗なオレンジ色になっていて、夕陽が当たるとより一層輝く。

 楓と一緒に歩いてたころは、緑が映える時期だったね。太陽が高くて、光が眩しかった。
 いまは、ねぇ、見える? 楓の葉が綺麗なんだよ、この道。

「見せたかったなぁ……」

 見たら、綺麗だねって言うよね。笑って。隣を見ると、居るわけが無いけど、なんだか立って歩いてるようで。ああ、こうやって2人で歩けたら良かったのになって思う。

 あの時は、君じゃなきゃいけなかったんだ。もっと思い出を作りたかったな。

 楓が言ってたじゃないか。ひとりじゃないんだ。あたしは、想いを抱えて歩いていく。目を閉じれば、ほら。あなたが、微笑んでいる。


「……青葉」