インストール・ハニー


 夏休みが終わって、1か月ちょっと。もうサンダルでもないし、袖でもない。9月の残暑は厳しかったけど、それも10月に入れば秋一色になった。

 楓が居なくなってから、秋を迎えた。スマホを開いて呼び出せば、まだあたしの前に現れるんじゃないか、あの椅子に座って、紅茶を飲んでいるんじゃないか、笑いかけてくれるんじゃないか、そう錯覚する。

 8月31日はさ、1人でケーキ食べたよ。こっそり2個、いちごのショートケーキ買って来て、紅茶入れて、2個1人で食べちゃった。(美味しかった)


 部屋に1人で居るとね、勘違いしちゃうよ。

 あのゲームアプリは起動させても「clear」の画面でずっと止まったままだし、クリアのアピールはもう良いよ分かったよって感じ。

 一海や佐山さんには「楓は国に帰った」と伝えた。口から出まかせもいいところだ。国ってどこだよ。それはあたしも知らないし。だから腫物に触るようにして楓のことは聞いてこない。きっと別れたと思ってるに違いない。

 楓、みんなのこと全部忘れちゃってるんだよ。本当のことを知ったら、みんな寂しがるだろうね。