美琴にとっては、純粋に言葉通りの意味合いだったが、そんな発言は大和の頭に邪な考えをよぎらせる。
きちんと自分の言いたい事が伝わったか不安になった美琴が、じっと見上げると、大和は見つめられて動けないままごくりと喉を鳴らした。

誘われてるのか……?
いやでも……。

そんな言葉が頭の中の計りの左右に乗っかり、シーソーゲームを始める。

勘違いして美琴を怖がらせたら、今まで時間をかけて近づいたものがすべてゼロになってしまうかもしれない。
だけど、今このシチュエーションで何もしなかったらそれはそれで男としてヘタレのレッテルを貼られてしまうかもしれない。

他の誰にいくじなしだとか言われても構わない大和だったが、美琴にだけはそんな風に思われたくなかった。

だから、今美琴が何を望んでいるのかを読み取ろうとじっと見つめてくる美琴の瞳を観察するように見て、見つめて……クラクラする頭を必死に支えながら握る手に少し力をこめた。

ここで自分の欲望のまま動くのは簡単だった。
でも美琴の気持ちを大事にしたい。
そんな気持ちが、大和を悩ませていた。

だけど、大和にドキドキしただとか好きな人相手だとか触られるのが嫌じゃないと言いながら、うるませた瞳でこれでもかってほどに見つめてくる美琴を、誘っている以外にどう判断すればいいんだと、もうそれ以外ないだろと、もう一度ごくりと喉を鳴らして自分を奮い立たせる。