今回の出来事を
旦那さんには全て話した。
いや、厳密に言うと
キスの部分は省いておいた。

何故、話したかと言うと
彼は私の不思議な力を
信じてくれている数少ない
いや、唯一の存在とも言えるから。
私が一通り話終えると
それまで何も言わず静かに聞いていた彼は

ーーー良かったんじゃないかな
先輩にとって、君に会えたことは。
でも妬けるな、少しだけどね

と言い、笑いながら私の唇を親指でなぞった。
そうだ、彼は人一倍、感の良い人だった。
どうやら……






今でもあの日の事は夢のような出来事に思えるけど、あの時、先輩が私の財布に入れてくれた
500円玉はちゃんと残っている。
よくみると、少し血痕が付いていて
何かの弾みでなったのかほんの少し変形していた。事故の恐ろしさが一瞬で伝わった。

それから、先輩に言われたからって
訳じゃないんだけど……
実は最近になって
地元のバレーボールサークルに
入ったりした。

丁度、ダイエットしなきゃとかって
思っていたし……








バシンッ
と体育館の床にボールを打ち込む
部活の頃とは違って
今は純粋に楽しみながら
プレイすることが出来る。

バシンッ
今日はアタックのキレが良い。

バシンッ

ーーーやるじゃん

えっ?

体育館を見回すけれど
当然、先輩がいるわけもなく……

「まさかね
よーし、もういっちょ行くよー」

メンバーに声を掛け
ボールを打つ






アオイヒカリが
今度こそ青い空へと消えていった事を
私は気づいていなかった。