「可愛いし気が利くし。あんな子彼女に出来たらサイコーだろ?」
「………」
同意を求められて、素直にうなずけないあたし。
まるで負けを認めたくないみたいで、余計にみじめ。
「マネージャーもあからさまだから。翔平だけ特別扱いだもんな」
ほら見てよ、と彼が指さす方向には、翔平のテーピングを巻き直している彩乃ちゃんの姿があった。
ズキンッ……
翔平の足に直に触れ、時に心配そうに眉を歪めながら手当するその姿は、好きな人の為に尽くしたいという気持ちがあたしにまで伝わってくるような甲斐甲斐しさ。
翔平だっていつかのようにツレない素振りじゃなくて、彼女をちゃんと見てる。
「……、」
……彩乃ちゃんは。
こうして毎日翔平との距離を詰めていたんだ……。
あたしは…翔平がテーピングを巻いてることさえ知らなかったよ……。
「妹ちゃんからも、しっかり翔平に言っといてよ。付き合ってもマネージャーはみんなものだって。あ、俺もう行かなきゃ!」
彼は白い歯を見せてニッと笑うと、体育館の中へ走って行った。



