「葵~」 女性が呼びかけると少女が振り向く。 「お弁当、忘れてるわよ!」 「いっけなーい!ママありがとう!」 そう言って、女性に抱き着く少女。 「もう、そそっかしいんだから。休憩時間にちゃんと食べるのよ」 「中身は?」 「葵の大好きなハンバーグよ」 「やったあ!」 満面の笑みで体を引っ付けたままの少女と、同じような笑顔で頭をなでる女性。 「……」 その光景を、あたしはぼんやりと眺める。