「あ~あの子、完全に翔平狙いだね」
「やっぱり莉子もそう思う……?」
どこか黒いオーラを醸しながら彼女を眺める莉子に、元々穏やかじゃない胸が更にざわついた。
「1年のマネージャーはあたしだけみたいなの。不安だし、力になってくれたら嬉しいなっ」
彩乃ちゃんが一生懸命話しかける側で、翔平はマイペースに携帯を取り出していじり始めた。
「マネって、要は選手のサポートするわけじゃん?なのに力になってほしいって…クックック……」
莉子が笑うその横で、あたしは真剣に事の成り行きを見守っていた。
その猛アピールは稀に見る勢いだったから。
「実は…バスケのルールも分からないの。あたしに務まるかなぁ…」
毛先を指でくるくる巻きながら、彩乃ちゃんは上目づかいで翔平を見上げる。
メールでも打っているのか、翔平の右手は携帯の上を滑っていた。



