ゆっくりと 翔平が離れていく――… ……っ。 唇を噛みしめて、声をあげるのを我慢する。 スローモーションのように見えるこの瞬間を、忘れまいと胸に刻み込んだ。 またこうして触れ合える、その時まで。 翔平はあたしを胸から離すと、何も言わず脇を通り過ぎていった。 二階へ上がる翔平の足音が、だんだん遠くなっていく。 その音が完全に聞こえなくなると。 「…うっ……ああっ……」 我慢は限界を超えた。