「え。その顔、もしかして忘れてたの?」 「う、うん…」 あたしは正直にうなずいた。 ――あり得ない、そう言って目を丸くするのは、秋山 莉子(アキヤマ リコ)。 「新年度に入ったら、すぐ美桜の誕生日が来る。あたしだって覚えてるのに。もーしっかりしてよー」 大きな口を開けて笑うボーイッシュな彼女は、あたしの幼なじみ。 「だって、今朝、誰も……」 朝起きてからのことを思い出してみる。 お父さんもお母さんも……誰も……。 うん。 やっぱりおめでとうなんて言われてない。