「水やり?」 「あっ、おかえり……」 そこへ自転車を引きながら現れたのは翔平。 「美桜、花好きだっけ?」 翔平が首を傾げる。 「あー、うん……」 確かに普段は庭の花なんて大して気にも留めてない。 お父さんとお母さんの趣味で拡大していった自家製庭園だし。 「美桜が水やりなんて珍しいな」 皮肉めいて笑った翔平は、ジョーロを持つ反対の手から、あたしの鞄を取り上げた。 その自然な行動に、胸がとくんと鳴った。 翔平の何気ない優しさはいつものこと。