走る足を止めて、乱れた呼吸をゆっくりと整える。 「あの、対処法ってなんですか?」 「……対処法っていうか……、ひたすら謝ったら“いいのよいいのよ”なんて笑って許してくれるんだよ」 「………」 それはきっと、相手が裕貴先輩だからだと思う。 あたしが同じようなことしたら、笑顔も“いいのよ”の言葉もなく、延々と嫌味を言われるに違いない。 ……あのおばさん。 ひょっとして裕貴先輩のファンなのか? 「それにしても、お母さん、大丈夫?」 「あー……、はい、今日はゆっくり寝かせておきます」