黄色い線の内側までお下がりください


 久しぶりに乗る電車にあの時のことがシンクロして、うずく。


 だんだんと近づくあの駅は今はどんな姿をしているんだろうか。

 変わらないんだろうか、それともすっかり様変わりしているんだろうか。


 隣で楽しそうに話している大梯の話は右から左だ。

 そんなことに集中してなんていられない。



 次の駅は、あの駅だ。



 繋いでいる手に力を込める。何も知らない大梯はそれが可愛らしく見えたのだろう、少しだけ強い力で握り返した。


 心臓はドキドキと音を立てて、呼吸は早くなる。


 桜が真っ二つになった、その上を踏みつけていくと思うとそれは快感になり、逆の意味で疼く。

 用賀の血肉がまだ残っていると思うと、なぜかいとおしく感じる自分がいた。



 ホームの端が見えてきて、そこにはまばらだけど人がいて、見覚えのあるベンチも確認できるようになった。


 変わっていない。



 先頭車両に乗っていた二人は前方が見えるため、見はらしはいい。


 どこかにあざみがいないか、ホーム下から這い上がろうとする亡霊はいないか、無数の手が延びていないかを目を皿のように丸くして探し回る。