黄色い線の内側までお下がりください


「富多子ちゃん今度の日曜日、暇だったらちょっと出掛けない?」

「いいけど、どこに?」

 夕食後に二人でのんびりとテレビを観ながらココアを飲んでいるときに大梯が富多子に話しかけた。

 出掛けようとしていた場所はピクニックで人気のある公園で、お弁当を持って出掛けないかという誘いだった。

 もちろん二つ返事で行くと答えた富多子は、土曜日にお弁当の材料を買いに行こうと提案する。




 大学生だがまだ未成年なので、できるバイトもたかがしれているため奮発したデートというのは難しい。




 電車で目的地へ向かうにはあの駅を通過しなければならない。



  富多子はそのことを思うと心臓がどきりと音を立てた。


 あざみに会ってしまうんじゃないかという恐怖と、

 あざみに会えるんじゃないかという期待だ。



 無意識に隣で無垢に笑う彼氏の横顔を見てしまう。


 私は何を考えてる?


 自分の欲望の為に、今度はこの彼氏を手にかけようとしているのか?


 つばを飲み、恐ろしい考えを振り払う。


 富多子は高鳴り始めた胸の内を押し潰すように気持ちを自分の中に押し隠した。