黄色い線の内側までお下がりください


 富多子は好奇心を抑えるのに必死だった。

 人の死を目の当たりにすると、妙な興奮に胸が踊る自分がいた。

 ホーム上を歩くすべての人を突き落としたい衝動にかられていた。

 肉が削り取られるあ鈍い音、血渋きが飛び散る瞬間、寸断されても言葉を発する頭を眺めたいと思った。

 下っ腹がうずくあの感覚はあの日以来、受けていない。




 新町桜が死んだあの日から、その衝動は日増しにつのっていく一方だ。



 富多子には現在新しい彼氏がいる。


 あの事件は自殺として片付けられたので彼女に捜査のメスが入ることはなかった。

 しばらくおとなしくしていた富多子だったが、ニュースや新聞で残忍な事件を見聞きするたびに我慢していた欲望が膨らみ、今では爆発寸前にまで達していた。


 富多子の彼氏は用賀とは逆のタイプ。


 モテそうな要素はなく、その分一緒にいても安心できて落ち着くことができる雰囲気を持っていた。


 物足りなさはある。


 しかし、今の富多子にはそんなタイプの男が精神的にも落ち着けて丁度よかった。


 池尻 大梯(いけじりだいし)同い年で気もあった。





 同棲しはじめて3ヶ月が経った頃に大梯が富多子を誘ったことがきっかけで、止まっていた歯車が動き出してしまった。