「今日も来なかった。今日じゃない」
あざみが誰に言うとでもなく発した言葉は誰の耳に入ることなく宙を抜けた。
ホーム上の電気が消えると、それに合わせるようにあざみもまたどこかへ消えていく。
終電か終わったあとのホームは冷たくて寒い。
駅員が掃除をしに毎日のようにホームを端から端まで歩くが、その左手首には数珠が巻かれている。
そして、もちろん黄色い線より外側へは行かない。
そんな駅員を面白そうに眺めながら、背後をついて回るあざみの顔には笑顔が浮かんでいるが、歩き方はぎこちなく、遅い。
身体中の骨があり得ない方向に曲がっているのだからあたりまえかもしれない。
落ちそうになる目玉を目の奥に押し込み、腐り落ちていく顔の肉を抑えながらべっとりと張り付いている。
背筋が震えるときにはそこに何かがいる。
そんなときは決して後ろを振り向いてはいけない。
そこには、いてはいけないものがあなたを見下ろしていて、大きく見開いた目をむけてあなたを観察しているから。

