「...ほら」

 崩れ落ちる顔の肉、肩から腕がすっぽりと抜け、落ちた腕は線路上に転がり左右に揺れている。


 死臭が漂う。

 気持ちが悪く、体が強ばり力が入る。

 足は震え、脂汗が舐めるように全身をつたう。




 あざみの足下には未だに消えることなく紫陽花が咲いている。




 桜の体は自由を失ったように意志とはうらはらなことを繰り返す。





 雨が強くなってきた。




 冷たい風がホームを上下左右に踊りながら吹き抜ける。


 意志とは真逆な行動を起こし始めた。



「桜ちゃん」



 桜の真横には、笑っているあざみが立っていた。



「だってあんたさっきそこで」



 もう何がどうなっているのかすら分からない。


 脳は思考をストップさせ、


 線路に向かって勝手に歩く足はもはや止めようがない。


 無理だ。