黄色い線の内側までお下がりください


「やめたほうがいいです」


 桜が線路に飛び降りる直前、富多子が唐突に声をかけた。


 そうだ。この子、まだいたんだ。


 そう気付いた桜は線路の下に下ろした足をホームに戻す。






「殺されますよ」

「何言ってんの?」

「ほら、もうあの人に憑かれてる」

「何言って・・・」

「線路に降りて何するんですか?」

「線路に降りてって・・・」



 桜の顔面から血の気が引いた。



 何、やってんの?



 ほんと、何、やってんの? 私。


 全身が震えた。


 線路を見たが、まだそこに紫陽花はある。







 でも、あざみはどこにもいない。